石川智朗助教、大前隆志特任助教、濱野有里医員
小児科領域における腎疾患は、ネフローゼやIgA腎症などの慢性腎炎を中心とし、本邦における学校検尿システムも手伝って、一般診療においても度々遭遇する疾患です。小児腎疾患は、ステロイドの投与量を多く要することもあり、原疾患の管理に加え、ステロイドの副作用のコントロールや精神運動発育などにも考慮した全人的医療を行っていくことが必要になります。そのためには、腎生検などの手技的な技術とともに、専門性の高い知識を持ち合わせた、小児腎臓病医による診療が望まれます。
現在、奈良県下において小児腎臓病医が常勤しているのは奈良県立医科大学のみで、腎生検を要する症例では集約して管理を行っております。また、他府県ながら、三重県や大阪府の一部(八尾市等)からも多数ご紹介頂いております。
診療面では、糸球体腎炎、ネフローゼ症候群、慢性腎不全、先天性腎尿路疾患、尿細管疾患の患者を対象に診断、治療を行っています。特に、「小児特発性ネフローゼ症候群」と「IgA腎症や紫斑病性腎炎などの慢性腎炎」は、当科の特色である血液凝固病態の解析を全国に先駆けて行っております。勿論、治療に関しても、リツキシマブ療法や免疫抑制剤を上手に使うことで、再発の管理を専門的な見地から行っています。
小児の腎炎・ネフローゼ患者の親御さん向けの図書として、東京医学社より図書が出版されています。患者さん向けにわかりやすく、解説されております。もし、宜しければご一読ください。(執筆・監修伊藤秀一・共著石川智朗)
若年性特発性関節炎、全身性エリテマトーデスを中心として膠原病関連疾患の診療を行っています。その他の疾患としては、強皮症、皮膚筋炎、高安病、ベーチェット病などがあります。NSAIDs・ステロイド・免疫抑制剤および生物学的製剤により疾患をコントロールしています。 また、周期性発熱症候群と呼ばれる自己炎症性疾患では、全国の診療体制にご協力させていただいております(「自己炎症性疾患サイト」http://aid.kazusa.or.jp/2013/medical)。
急性腎障害や川崎病や代謝性疾患など、血液透析・血漿交換療法等の血液浄化療法を行っています。適応年齢は、新生児から年長児まで、幅広く対応しています。末期腎不全の患者さんには、腹膜透析の導入や管理・腎移植の施設との橋渡しを行います。また、小児泌尿器科医とも連携し、膀胱尿管逆流症等の先天性尿路奇形の外科的治療のサポートも行います。